名称: 繰り小刀
相州光悦作



銘は相州光悦。
昭和45年(1965年)つまり内弟子になって今に至るまで
一日も使わなかったことのない繰り小刀である。
今では銘の相州はほとんど見えなくなっている。相州とは相模のことである。

名刀相州正宗とは関係ないだろうが相模の職人が作ったとは想像できる。
奥沢の仕事場から5分の自由が丘駅を目黒に向かった道具屋で買った。
ここの親父は偏屈で有名だった。よく何も知らないと言って叱られた。それでも通った。
なんとなく教えられているような気がしたからである。

日本を出て10年たったころ行ってみたが店はなくなっていた。
光悦の繰りこ(大工は繰り小刀をこう言う。)を買いに行ったのである。
それ以来ぼくは日本に行くたびに鎌倉を中心に光悦を探しているのだが
いまだに見つからない。
日本中回ってその土地の道具屋には必ず寄ってみるが
これほど切れる繰りこに出会ったことがない。

昭和45年以来45年使ってこれだけ短くなった。一生使えるとよく言う。
まさにその通りだった。
光悦の名前まですべてが消えるまでまだ15年は使えるだろう。
しかし跡継ぎがほしいのである。
ぼくの寿命とどっこいだがロウソクはやはり長く灯っている方がよい。