___ 2008年


2005年

この年ぼくは65歳になった。村の船頭さんは今年60で
おじいさんと言われたがぼくはまだ若い。
他人が何と言おうと若い。だがヴァイオリンを作っていながら
相応に年を食べている(食っている)ことはわかる。
5ミリの幅の板に50本の線を引くのは難しくなった。
第一メガネがいる。誰にとってもメガネは便利で
不便なものであるがいつも思うのはアンドレア・アマティや
ストラディバリたちはどうしていただろうかということである。
どちらも長生きだ。1600年初頭にはガリレイが
大きな倍率の望遠鏡のレンズを作っているから
メガネはあったろう。くわしくは知らないが
電灯もない時代だから不便だったには間違いない。

ところがストラディバリなどは一般的によく言われる
1000台以上も作ったなどとは一人では絶対に不可能であるが
現代の便利な時代で考えても非常に多くの楽器を作っている。
果たしてかなりの年齢までどうやって作っていたのだろうか。
ぼくは今ヴァイオリンとヴィオラとチェロを同時に作っている。
チェロを削りながらヴァイオリンに切り替えると
なんて楽なと思うから比較をすれば違いはあるが
まだチェロを大変と思ったことはない。
フェルディナンド・ガリンベルティ先生は88歳で亡くなられたが
チェロが好きでぼくがミラノの仕事場に伺っていた頃は
80歳に近くチェロも作っていらした。
したがってぼくはまだ若いのだからチェロはもとより
コントラバスまで作れるのである。だが人には個人差がある。
ぼくは自作のヴァイオリンは絶対誰にも手伝わせない。
果たして自分の力だけで後何年作って行くことができるのだろうか。
80までにはあと14年しかない。14年もあるとはまだ思わない。
結論としてはこんなつまらないことを考えないで
いつも通り楽しくやっていくと言うことであろう。