___ 2005年


2005年

この年2005年を境にして
ぼくはマスコミの取材を遠ざけるようになった。
あるテレビ番組がきっかけなのだが
このクレモナでのロケの時ぼくは体調が非常に悪かった。
世界で症例が100未満というものすごく珍しい
二分脊椎脊髄腫瘍の手術後の経過が
思わしくなくなってきたからである。
ガンの一種で良性だがたちが悪い。
症例が少ないため治療方法がわからない。
脊椎を壊して中に巣くっているガン細胞を
10時間近い手術で取り除いたのだが
どこの神経を傷つけるかわからないため
少し残したのがこのころになって増殖したのだった。
体調が悪いのを堪えて夜中までの取材が続いた。
後に放映された「ストラディバリ」という番組で
ご覧になった方もいるだろう。
北部イタリア山岳地帯に分け入り
モミの木の伐採シーンでは
いかにぼくの足が悪かったかが正直に映っている。
ロケ隊の取材通りに編集していれば中身の濃い
素晴らしい作品になっていたはずである。

しかしながらストラディバリのヴァイオリンのニスの秘密は
殺虫剤にありというアメリカ人の大発見に
多くの放映時間を当てたためクレモナの製作者たちの
貴重な話がカットされてしまったのである。
彼らは石井のためといって取材に協力してくれたのであるが
制作局が日本に帰ってそれ以後一言の礼も言ってこない。
堅く約束した作品のDVDも送ってこない。
出演してくれた友人たちに町で会ってどうなったか聞かれても
何も答えられないという日がずっと続いたのであった。
どうしてぼくがマスコミに協力しなくなったかお分かりになっただろうが
ぼくの話が一方的と思われる方がいらしたら
ぜひ局側からも話を聞いてほしい。
まさかでたらめとは言うまい。怒りは大分おさえて言った。
他の局でもこういうことがあったから
クレモナ人の警鐘として言っておく。
なおぼくの奇病に関してはその後何もしていないのに治まっている。
ただ不自由なのは足だけでヴァイオリン製作には何の支障もない。
それが証拠にこのヴァイオリンを見ていただきたい。
石井 高の作品である。
楽天の性格は何をも恐れないことがおわかりであろう。